私より気まずそうな顔をしながら、リアムはアレックスを目で追っていた。
そんな困った顔をしないでよ。
傷付くでしょう。
目も合わせてくれないのね。
「仕事中でしょう?嫌ならいいよ、さりげなーくフェードアウトして何か食べるから大丈夫」
明るくそう言って
その場を離れようとしたら
グイッと腕を強い力で捕まれた。
「あ……」
「曲が始まる」
黒い革の手袋が私の手を取り、音楽が流れる。
パートナーを替えて
二曲目のワルツを踊る私。
リアムと踊るワルツは丁寧でなめらかだった。
リードも優しく正確だ。
俺様ドSの騎士団長なら、もっと乱暴でマイペースなワルツを踊るかと思ったら違っていてビックリする。
でも
キスもそうだった
リアムのキスは甘く優しか……何を思い出してるんだろ私。
顔が赤くなる。
ドキドキしてる
ときめいてる
もしかしたら
いやきっと
私はリアムに惚れているのかもしれない。
キスでだまされちゃいけないよ。
俺様ドSな男はタイプじゃないでしょう。
どっちかといえば
アレックスみたいな優しさのカタマリというのか、あんなにキラキラしなくてもいいのだけど、優しくて思いやりがあって気が利いてイケメン金持ち権力者なんて理想でしょう。ベッドに誘われたらありがたく付いて行ってもいいレベルだけど……だけど……。
リアムなんて嫌いなタイプだけど……恋って理屈じゃないんだよね。



