「王の背中に大きな傷がある」

「アレックスの?」

「20年前の傷で邪悪な魔法の剣で斬られたから、今でも跡が残り清めている」

「大きな戦いだったって聞いた」
そこで
お互いの両親を失った悲しい戦い。

「俺は情けないけど、声も出せずに腰を抜かしていた。叶うものならあの時に戻って自分を殴りたい」

「子供だから仕方ないよ」

どこまでも厳しい人だ。

「敵が獲物を見つけて笑いながら剣を上げた時、王が俺をかばって背中に剣を受けた」

アレックスが?
そんな子供がすごい勇気。

「王は生死をさまよったが生きてくれた。その時俺は自分に誓った。これから何があっても、自分の命に代えて王を守ると」

「リアム」

「王には幸せになってもらいたい」

「アレックスの幸せは、リアムの笑顔だよ。あとシルフィンもジャックもフレンドも……自分の大切な人達、国の人々の笑顔と美しい自然が守られる事だと思う」
私がそう言うと
リアムはちょっと驚いた顔をしてから、笑顔を見せてくれた。

めったに笑わない人の笑顔は魅力的だ。それってズルいよね。

「他国から来たリナに教えてもらうとは」

「誰だってわかるでしょう」

リアムの指が私の左手を撫で、薬指にある珊瑚の指輪をなぞる。

「美しい指輪だ」

「ありがとう」
私のじゃないけど……。

リアムはそっと珊瑚に唇を重ねてから、私の瞳をジッと見つめる。

そっと自然に
どうしてそうなったのか私達もわからない

静かなる波の音が心地良いのか
海風が心地よいのか
よくわからない
彼の美しいヘーゼルの瞳が悪いのかもしれない

私はリアムと唇を重ねる。