ここにも絵本はあるのだけれど、歴史の本を読んでるような硬い文章と内容なので、いまいち読んでいても楽しくない。だから古典からディズニーまでアレンジを加えて簡単な絵本を作ってフレンドに読ませていた。

フレンドのお気に入りはシンデレラだった。

古今東西
どの世界にも大人気な、夢見る乙女のサクセスストーリー。

リアムはそれを手に取ると鼻で笑う。
バカにしたな
全女性を敵に回すぞ!

「この王子はうちの王に似てる」

「モデルが欲しかったの。肖像権の侵害になる?」
アレックスは絵本の王子にピッタリで、リアムは怖い悪役にピッタリだった。

「靴のサイズが同じ女など、探さなくてもそこらに居るだろう」

「それは魔法の靴だからピッタリじゃないとダメなの。運命の相手なんだから」

「運命の相手ね……」
また笑うので私は転がってる消しゴムをリアムに投げつけた。

「乱暴だな」

「女子の夢を壊さないでくれる?フレンドなんて大好きで、何度も読ませられてるんだから」

ドラゴンだってラストはハッピーエンドで、王子様と幸せに暮らしましたの話が好きなのだ。

「王も舞踏会で妃を捜して欲しいのだが……」
タメ息混じりでリアムが言う。

私は前に聞いたアレックスの言葉を想い出す
『夫に先立たれた妃が気の毒だ。残された者の気持ちが一番わかるのが私だからね』
悲し過ぎる言葉だった。