「だから人々は働きます。王様はそれが一番良いと思ってます」

「魔法で何でもできると人間ダメになるよね」

私は魔法が使えないけど、宝くじで1億当てたら会社を辞めてダラダラ過ごして、間違いなく人間ダメになるだろう。

話ながら歩いていると人通りも減ってきて、景色は静かな住宅街となる。
どこの家も石造りで落ち着いた雰囲気だ。

通り過ぎる家の扉が開いて、ひとりの老女が出て来た。

目線が合ったので「こんにちは」と挨拶をすると、汚れた物でも見るような目線で私達を見る。

あ……異世界のヘンなヤツが気に入らないのかも。すいません。

コソコソと通り過ぎようとしたら

「街から出て行け!悪魔め!」

足元にある石を握ってシルフィンに投げつける。

「ちょ……ちょっと、止めて下さい」
驚いてたらシルフィンは悲しい顔で「いいんです」って反撃もせず、ペコリと老女に頭を下げて「行きましょうリナ様」と走り出す。

私はシルフィンの後を走って追いかける。


追いかけて追いかけて

たどりついたのは

崩れかけた小さな神殿。

大きな雷が落ちたように崩れている神殿で、綺麗な柱が中途半端に切られた大木のようにそこにあった。
長さも揃ってなくて危険地帯。
崩れてない時はさぞかし立派だったのだろう。破壊された彫刻も散らばってる。あの王様が崩れかけた建物をこのままにしてるなんて不思議だった。