「リアム様ーーー!」

背中であまりにもうるさいので、リアムは手を上げてジャックの位置を5メートルほどアップするとジャックの叫び声もアップする。

「助けて下さいって、リアム様は剣も魔法も一流です。さっきのは軽い冗談で……あれ?リアム様、海岸で誰か倒れてます」

「ん?」

「右手の方に……誰か横たわってます。もしかしたら救世主様かも」

「助かろうとしてそんな嘘を言うか?」

「嘘じゃありませんよ、見て下さい」

真剣なジャックの声に押され、リアムは小さな金の双眼鏡を取り出し海岸を覗くと、確かに何かが横たわっていた。

もしかして……あれが救世主。
身体中に力がみなぎる。
リアムは馬の横腹を蹴り上げ
長い髪を海風になびかせ小さな影に向かって一直線に突っ走る。

心臓が高く跳ねる

占い師の言った事は本当だった。

世界一の魔法使いが現れたんだ。
この国と王を救う救世主が現れたんだ。

リアムは横たわる影の傍に行くと

そこには
女が足を波に向け
砂浜の上で倒れていた。