太陽がもう半分ほど沈んでいた。

時間は経過する

嫌でも経過する

時間は魔法より強し

背中で叫ぶジャックをうるさく思いながら、王の言葉を思い出す。

『私の命と引き換えにこの国が守れるのなら、喜んで差し出そう』

王は王宮でドラゴンの頭を撫でながら優しい声を出す。
リアムは片膝を着き、王の言葉を苦しい気持ちで聞きながらドラゴンを見ると、ドラゴンは涙目になって小さくイヤイヤと顔を横に振る。

『簡単な話だよリアム。私はドラゴンと共に散るから後は頼む』
王がそう言うと
ドラゴンは『死にたくない』と必死な目でリアムに訴える。

王もドラゴンも国も救いたい。
この美しい平和なヴィストロバニアを守りたい。

藁にもすがる気持ちでリアムは救世主を待っていた。

来ないかもしれない
ただの迷信かもしれない
占い師の気休めかもしれない

けれど救いを求めている。

冷静沈着で剣の腕は自他ともに認めるリアム。
たまにやって来る命知らずの敵に、自ら剣を持って突き進む強い騎士が、そんな救いを求めるだなんて笑ってしまう。

でもその笑いは空虚だ。