「お気の毒なリナ様。でも大丈夫です。きっと王様の力ですぐ戻れるようになります」
力強く言われてしまった。

「そうならいいけど」
あぁ大人になると前向きになれないのはナゼだろう。
スープを飲む手を止めて、少し悲しそうな顔をする私の顔を心配そうにシルフィンは覗く。

「王様に不可能はありません。慈悲深き優しい王様は不可能を可能にいたします。それに騎士団長のリアム様もいらっしゃいます」

「リアムか」
反射的に嫌な顔をしてしまう。
乱暴なドS騎士。

「リアム様は強くて男らしくて優秀なお方です。だから絶対大丈夫です」

「あはは……」
笑いが渇いてしまう。

「でも私は嬉しいです。お客様が来るのは久しぶりです。一生懸命お世話させていただきます」

「ありがとうシルフィン」

私も嬉しいよ。
こんなに愛らしい女の子にそう言ってもらえて心強いよ。
愛に溢れて虫をも殺せないような可愛らしい女の子……の目が鋭く光る。

えっ?

シルフィンは急に顔つきを変えて高くその場で飛び上がり、部屋の隅に微かに現れた黒い煙に向かってジャンプしながら胸元からナイフを出してスパスパスパ―ンって投げつける。

すると
その黒い煙はガラスを引っかくような苦しそうな叫び声を上げて消えてしまった。

何それ?
その素早い動き
目つきが変わったよ。すんごい怖い顔だったよ。ためらいなくナイフをガンガン投げつけたよね。

ガクガクする私に向かってシルフィンは「お食事中申し訳ありません。たまに結界を破り悪いものが紛れ込みますが大丈夫です」と、ニッコリ微笑む。

「あの……シルフィンの仕事って……」

「お客様を迎えるのもお仕事ですが、基本的に言えば暗殺です」

サラッと言われて胃が痛くなった。
外見だけではわからない。