アレックスに殺される前に
シルフィンに殺される方が正解かもしれない。

誰よりも王を想う澄んだ少女の瞳を見ていると
そう思ってしまった。

「そうです。ごめんなさい」

年下の女の子に真正面から頭を下げて、心から謝罪する。
こんな心を痛めての謝罪なんて
いつ以来だろう。

どっちかというと仕事でも私生活でも、謝罪される方が多かったから。

泣いてすむ問題じゃないし、私より泣きたい子を前にして涙を見せるなんて……ダメな大人です。

「泣かないで下さいリナ様。責めてはおりません」

「でも……」
シルフィンの気持ちを考えたら泣けてしまう。

「私は王様も大好きですが、リアム様も大好きです。みんなそうです。騎士団長であるリアム様はみんなに尊敬されていて誇れる方です」

「シルフィン」

「それに、王様が考えもなくリアム様と剣を交えるはずがありません。何か考えがあると思います」

大人の私が泣き叫んでるのに、シルフィンは冷静だった。

闘う二人を覗き込むシルフィンにならって、私も大きなツバメの背から二人を見る。

剣が火花を起こす勢いの接戦なんだけど、気のせいかアレックスの顔が楽しそう。

私の視線を感じたのか、リアムが視線をアレックスから外した瞬間「油断するな!」アレックスの大きな声がして、リアムの剣を手元から奪いリアムは観念したようにその場に倒れ込んだ。

「リアム!」
アレックスに負けないぐらい大きな声で彼の名を叫ぶと、シルフィンは私の腕をつかんで二人の元に瞬間移動してくれた。私はリアムとアレックスの間に飛び出してアレックスの顔をにらんだ。