いつも穏やかな王の顔が曇る。

長い指が優雅に私の頬をなぞる。

「リナ?」

「……ごめんなさい」

「私に逆らうのか?」

こんな冷たい声も出るんだって、変なところで感心してしまう。

「ごめんなさい」
顔を横にそむけたまま
バカ正直な私は謝罪の言葉しか出なかった。

キスぐらい
すればいいのに

こんな大切な時にアレックスに嫌な想いをさせてどーする。
でも
頭の中はリアムでいっぱいで
彼以外の唇を受け付けない自分がいた。

どの時代に飛んでも
不器用な私。

「私の妃になる約束はどうした?」

「それも……ごめんなさい」

バカだ
バカだよ私。

「リナはここで私に殺されても文句は言えない立場にある」

王の威厳にあふれた言葉が心臓に突き刺さった。

「わかってます」

それは私が一番わかってる。
自分を偽って生活すれば丸くおさまるけれど
それができないのが自分だ。

そして
私の愛する人もできないだろう。

動きを押さえたアレックスが、胸元から短剣を取り出すと、フレンドが何か感じたのか動きを止めた。

黄昏がアレックスの背景に溶けて
美しさの二乗
どんな時も王は美しい。