「ご機嫌なおしてー」

この戦いに勝利したら
とことんボール遊びでも絵本読みでも、何でも一緒に遊んであげるから。
いや私
ずっとこの世界で過ごすつもりか?

ふと我に返って考えてたら
ジャックが急に現れて「リナ様。剣の稽古のお時間ですよ」と、呼びに来てくれた。私はジャックに困った顔をして、部屋の隅でメソメソしているドラゴンを指さした。

「あー困ったなぁ」
ジャニーズ系男子は、困った時もサラッと笑顔で爽やかである。

「フレンド。一緒に空の散歩に行こうか?あまりワガママ言うと、リナ様に嫌われるぞ」
ジャックの言葉に肩をビクッと震わせて、フレンドは私を見つめる。

すがってるすがってる。
まだ子供なんだよね。

フレンドだけじゃなくて
この戦いには
誰もが不安を抱えている。
不安を吹き飛ばすには強くならなきゃいけない
剣も気持ちも心身ともに強くならねば。

「フレンド!剣の稽古に行ってくるね。また後から来るから一緒におやつ食べよう。ジャック、私の部屋まで送ってちょうだい」
送ってと言うより、飛ばしてか。

涙目のフレンドに後ろ髪を引かれながら
私は自分の部屋に戻り、着替えて剣を持つ。

ドレスで剣の練習はできないから、騎士団もどきの軽い練習着を作ってもらった。

『ジェニファー・ローレンスがハンガーゲームで着ていたような、黒い伸縮性のあるシュッとした超カッコいいラバー系の戦闘服がいい』と、何でも形から入る私はワクワク気分でリアムにそうリクエストしたけれど、完璧スルーされ、ごくごく普通の白いブラウスに、長い紺のジャケット紺のパンツに黒のブーツを与えられた。

羽の付いた大きな帽子をかぶったら、コスプレ大会で入賞できるかも。

「さて、行くか!」
自分に気合を入れて軽やかに中庭に行くと、いつもの難しい顔でリアムが「遅い!」と鋭く言う。