「素晴らしいピアノ演奏をありがとう。リナのおかげで勇気を持てた」

「アレックス」

「私の大切な救世主。必ず私達は勝利して、幸せな花嫁にしよう」

アレックスとシルフィンの姿はアッと言う間に目の前から消えてしまった。早っ!風のようだ。

残ったのはリアムと私だけ

ふたりだけ。

「部屋まで送ろう。剣を持て」

「はい」
言われるまま剣を持ちリアムの前に立つ。

「明日から剣の練習をする。いいな」

「はい」
嫌って言えないでしょう。
この剣はきっと私にしか使えない。

なんか
ため息しか出ない。

みんなヤル気満々で、やっとアレックスが立ち上がったのに、救世主が何もできない私なんてガッカリだよね。

「リナ」

「ごめんね」
私が謝るとリアムは「何だ?」と上から聞く。

私は重い気持ちでリアムの礼服のボタンを見ながら話をする。恥ずかしくて顔なんて見れない。その恥ずかしいは照れるじゃなくて……自分に呆れての自虐的なものだった。

「こんな私でごめんなさい」

「こんなとは?」

「さっきリアムも言ってたじゃない。リナは魔法も使えないポンコツだって」

「ポンコツとは?」

あ、ごめん。
ポンコツは通じなかったか。笑っちゃう。