シルフィンの目に涙が浮かんでいる。

アレックスが私の手を取り
そっと手の甲にキスをする。

「素晴らしい演奏をありがとう」

「魔法をかけてもらったの」
正直に笑って言うけど、アレックスの目は真剣だった。

「なんて美しく心に響く曲なんだ。リナは天才だ」

いや
天才はドビュッシーです。
天才だから音楽室の後ろに肖像画が飾られてます。

「こんな素敵なプレゼントは初めてだよ」

「ありがとうございます」

褒められすぎてどうしましょう。
恥ずかしいな。
みんなに拍手されて照れてしまう。

「感動したろうリアム」
アレックスは遠くを見てそう言った。
えっ?リアムもいたの?

アレックスの目を追うと確かにリアムはそこに居た。
そして「はい」と一言だけ返事をする。

「『はい』だけか?物足りないな。リナは素晴らしい女性だ。私の妃になってほしい」

アレックスがそう言うと、城中に大きな動揺が走った気がした。

またいつもの冗談だよね。
笑って返事をしようとすると、アレックスの様子がなんか違う。真剣な顔で私を見ていた。

えっ?ちょっと!
おふざけが過ぎますよ王様っ!
今日は領主様のご令嬢がいっぱい来てるんだよ。他の国からもお姫様クラスがいっぱい来てるよ。

みんな
イケメン王様の嫁になる気満々で来てるんだよ!

その冗談はキツいよ。