「高木さん。」
「はい?
え。五十嵐先輩?」
中庭でお弁当を食べ終わった頃。先輩が声をかけてきた。
佳奈は委員があって先に戻っていて、昼は食堂に行く人が多く、中庭にいるのはあたしたちだけだった。
先輩と話すときに人気が少ないのはありがたい。
「またお願いしたいんだけど。放課後。」
「あ。はい。いいですよ。」
新しい服、作ったのかな。
あの下手くそな演技とともに、水をかけられてから3日。
ほかの人たちや、あの人たちから、嫌がらせは何回かあったけど、そんなにたいしたこともされていない。
たぶんそのうちおさまるだろう。
「高木さんはさ、」
「何ですか?」
「ドMなの?」
「はい?」
何を言い出すんだ、この人は。
最近この人に腹を立てることがなくて、忘れていた。
この人は、ろくな人ではないことを。


