五十嵐先輩と話している永渡先輩は、新海さんのことが好きだなんて少しも思わせない。
それはきっと、本当に心の底からお祝いの気持ちがあるからだろう。
ふたりが話している様子をみていると、新海さんが話しかけてくれる。
「高木さん。今日は来てくれてありがとう。」
「こちらこそ招待して頂いて、ありがとうございます。」
「高木さんが智紀と仲良いなんて知らなかった。」
「あたしが永渡先輩と……?」
「あれ、違った?
遠目だけど、ふたりが楽しそうに話しているのが見えて、随分仲が良さそうだなと思ったんだけど。」
泣いていたのは見えていなかったようで安心したけど、そんなふうに見えてたのか。
「今日久しぶりに会って少し挨拶をしただけで、そんなには……。」
「そうなの?」
「はい。」
「結構お似合いだな〜と思ったんだけどな。残念。」
「いやいやそんな。
永渡先輩は素敵な人なので、あたしなんかには……。」
「それを言うならこっちのセリフ。」
いつから聞いていたのか、永渡先輩がそう言って話に入ってくる。
「コウの急なわがままにも付き合っちゃうくらい優しいからね、高木さんは。」
「あのときは五十嵐先輩があまりに強引で……。」
「あー、そんなこともあったな。」
「陽華が目覚めてからは人が変わったように優しくなったけどねぇ。愛の力かなぁ?」
「そうかもな。」
五十嵐先輩のその言葉を聞いて、新海さんは照れている様子だった。
本当にお似合いの2人だな。
「んじゃ、邪魔者はこの辺で。」
「あっ、あたしも失礼します。」
もう一度お祝いの言葉を伝えて、永渡先輩とその場を離れた。


