1限目の授業が始まり、あたしは全くそんなつもりはないのに、隣で真面目に授業を受けている新海さんを、無意識に何度も見てしまっていたようで・・・。

そんなあたしに気づいたのか、新海さんはふとこちらを見て、にっこりと笑い、“どうしたの?”
と小声で話しかけてくれた。

あたしは“なんでもない”と言って、黒板に向き直る。
そしてなにも考えなくて済むように、ひたすらノートを書き進めていった。



「・・・疲れた・・・。」



「まだ1限終わったばかりだよ。どうしたの?梨々。」



「・・・なるべくなにも考えないことに集中しすぎて・・・。」



「え?なに、どういう意味?」



五十嵐先輩と新海さんのことを考えないようにするために、いろいろと別のことを考えていたわけだけれど。

自分に気を遣いすぎて、疲れた・・・。



「高木さん。」



「……新海さん。」



「授業中、こっちを見てたみたいだったけれど。
なにかあったの?」



「あ。ううん。ほんとになんでもない!」



「そう?」



「そうそう。」



「そっか。ならいいの。
話の途中に邪魔しちゃってごめんね。」