【五十嵐幸樹side】



その電話が来たのは、体育祭の日だった。

実際電話に出たのは職員室にいた教師で、僕は電話の内容を知らされただけだったけれど。

それを聞いた瞬間、僕は思わず走り出していた。



“陽華が目をさました”



もう誰もがそのときがくるのを諦めかけていた。

彼女の両親も、うちの両親も、親戚たちも、医者も。

けれど彼女は諦めてはいなかったのだ。


新海陽華(にいみ はるか)。
僕の幼なじみで、婚約者。

婚約者という表現より、許婚という表現のほうが合っているのかもしれない。


でも僕はずっと陽華が好きで、追いかけてきた。


今の学校も、陽華が事故に遭う前に、1年と数ヶ月間通っていた高校だ。

5つ歳が離れているから、小学校以来、同じ学校に通うことはなかった。

けれど、中学校も、高校も、陽華と同じがよくて、陽華の見ていた景色が見れるかもと思って、陽華と同じところに通っている。