ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「あれは誤解なんだ」

何があったというのだろう?

「でも、GPSは確かにホテルの一室を指していたって」
「蘭子さんが言ったんだ?」

やれやれと社長が溜息を吐く。

「あの日……確かに一日間違えたんだけどね、そのホテルで結婚記念日を祝おうと思っていたんだ。それでいろいろ準備をしていたんだが……」

どうやら社長はシークレットにそれを進めていたようだ。

「会っちゃったんだよ」
「誰に?」

副社長が訊ねる。

「新堂コンツェルンのあいつに」

ドキンと心臓が音を立てる。

「あいつって新堂社長?」

副社長の言葉に父の顔が浮かぶ。

「ああ、奴はその日そこで娘の誕生会を開く予定だったらしい」

姉の……十歳の誕生日。それをそこで……胸がぐっと詰まる。

「だから、私はそのホテルを譲ってやったんだ」
「別に同じ場所でもよかったんじゃない?」

副社長がそう言うと、社長は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「あの頃はお互いの父親たちが生きていたんだ。そんなところでブッキングしたらどうなると思う?」

「確かに」と副社長が大きく頷く。
社長の父親……ということは副社長のお爺様。『たち』なら私の祖父のことも含まれている。

「血を見るな」
「だろう?」

血を見るって……そんなに両家の確執は深かったんだ。
でも、あの祖父なら……分からなくもない。