ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「だからぁ、僕がいるときに瑞樹に近付かないで下さい!」
「瑞樹君が私に抱っことねだるんだからしょうがないだろ」

飛行機の中で社長と副社長はずっとこんな感じだった。プライベートジェットだからどんなに騒ごうが全くノープロブレムだが……この親子、本当に似たもの同士だ。

だからだろうか? 磁石の同極同士が相反するように、二人が反目するのは……。
でも、そんな仲でもやっぱり親子なんだと思える場面が多々あって微笑ましかった。

機内の賑やかな様子を横目に置き、私はシートを倒して窓の外を眺める。真っ青な空に、雲ははるか下だ。

飛行機に乗ったのはいつ以来だろう……。
当然、瑞樹は初めてだ。でも、初めてがプライベートジェットって。本当、笑える。

「何を一人でニヤニヤしているんだ?」

副社長が隣の席に座る。
瑞樹は……と見ると社長の膝の上でアニメ映画を観ている。

「瑞樹を取られちゃいましたか?」
「違う! 奈々美に話があるから貸してやったんだ」
「瑞樹はものではありません!」

ピシャリと言うと副社長が「当たり前だ」と面白くなさそうに言う。

「それより、剣持から聞いたよな? 母のこと」
「はぁ、今日から宿泊させて頂く海音リゾートホテルの社長さんだそうですね」

「ああ」と副社長が軽く返事をする。