ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「それで、シッターを雇うならと社長が子守役に名乗りを上げられた、ということですか?」

「ええ、それを名目に堂々と北海道に乗り込むおつもりだそうです。で、お母様とのことを盾に取られては、副社長も渋々でもOKするしかなったというしだいです」

剣持さんの説明を聞きながら益々呆れるが、副社長の瑞樹に対する過保護なまでの思いも分かった。きっと、見知らぬ土地で瑞樹を見知らぬ人に預けたくなかったのだろう。

副社長に誘われ、タラップを上がると男性の客室乗務員さんが出迎えてくれた。女性じゃないのはプレゼントの主がそう指示したからだそうだ。

ジェット機は副社長へのプレゼントだが、「奥様はヤキモチ焼きですので」と剣持さんが言った。

それは『誰に』対してなのだろうとちょっと考え、『社長に』だったら、奥様という人は意外に可愛い女性だと頬が緩む。

ジェット機の中は想像以上の豪華さで、空飛ぶ応接室のようだった。

ゆったりとした革張りのシートも世界三大銘木のひとつと言われるマホガニーでできたテーブルも、いかにも高級そうだがケバケバしくなく上品な逸品だった。

定員は操縦士や乗客乗務員を除いて十二人だそうだが、今日はその半数以下という実に贅沢なフライトで、到着の新千歳空港まで所要時間は約五十分強らしい。

瑞樹は最初、新たに出現したイケてるオヤジ、通称イケオジ社長の登場に目を点にしていたが、機上後三十分も経たずしてすっかり懐いてしまった。

時々、瑞樹の人懐っこさに危機感を覚える。ホイホイついて行ってしまい誘拐でもされたらと……。