ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「えっ!」

振り向くと社長と剣持さんがいつもと違った雰囲気でこちらに向かってくるところだった――剣持さんの同行は事前に聞いていたが……社長もだなんて。

それにしても、見慣れない私服姿だが、二人とも副社長にも劣らない艶やかさだった。

これじゃあ、女性としての立場がないと思いつつ、この三人とは並びたくないと心の中で盛大に溜息を吐いた。

――でも、社長ってば『お呼びじゃない』と言われているのに一緒に行って大丈夫なんだろうか、と心配するが……。

そんな私の心配をよそに社長は実に脳天気だった。

「おお! この子が瑞樹君か、まるで天使だな」

副社長が抱いている瑞樹の頬をツンツンし始める。その手を厭そうに叩き払う……副社長。二人の間に火花が散る。

「父さん、言っときますが、あくまでも子守の代打ですよ! 瑞樹に触っていいのは、どうしても僕たちが仕事で瑞樹から離れなければいけないときだけですよ!」

副社長が念を押すように言う。

どうやら、私以外の皆は社長の同行を知っていたようだ。でも、その理由が瑞樹のベビーシッターだったとは。ほとほと呆れる。

「社長がどうしても北海道に行きたいと……奥様と寄りを戻す算段を虎視眈々と計画されているようで……」

「でも、毎回失敗なさるのですが」と剣持さんが小声で付け足した。