ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

――と思ってみたりしたのだが、どんな方であろうと剣持さんをこれだけビビらせる女性だ、きっととんでもない人なのだろう。

益々、副社長に同行するのが厭になった。

でも……あの頃、学生のときと同じだった。テスト期間なんてこなければいいのに、と毎度思ったが、そういう厭な時間ほど早くくる。

***

「副社長……これなんですか?」

目の前のジェット機に目が点になる。

「名前を呼べと言っているだろう! お前は飛行機も見たことがないのか?」

叱られたり呆れられたりするが、そんなの目じゃない。

「機体に画かれている丸に東のマーク……これ丸東建設のプライベートジェットですか?」

「案外目ざといな。そうだ」

新堂コンツェルンも昔は持っていたらしいが、経費がかさむとかで手放したそうだ。

「凄いですね……」
「僕としては維持費がかかるから要らないんだが……蘭子さん……」

蘭子さんとは副社長の母上のことだ。剣持さんが教えてくれた。

「母からのプレゼントだから手放したくても手放せないんだ」

ジェット機をプレゼント……何と豪胆な母上様だ。
あまりにビックリしていたので、近付く人たちに気付かなかった。

「奈々美ちゃん、今日も可愛いね」