ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

想いというのは溢れ出したら止まらないものだと、今、初めて知った。

部屋に逃げ込み、眠る瑞樹に添い寝をする。その甘い体臭を嗅ぎながら切なさで涙が零れ落ちる。

副社長は追って来なかった。

きっと彼にも私の言った言葉の意味が分かったんだろう。私を好きだと錯覚しているのが……翠花の身代わりだということが……。

「瑞樹、人間って悩みが絶えないね」

瑞樹と二人だけで生きていたときは、瑞樹に不自由な生活をさせたくなくて、お金の心配ばかりしていた。でも、ここに来てからお金の心配は皆無になった。

なのに……私はまた悩みを抱えている。

「瑞樹、どうしよう……」

そう、私はまた気付いたのだ。身代わりが厭とかそんな問題じゃないということが。

「益々、新堂の者とバレるわけにはいかなくなっちゃった」

未だに忘れられないくらい好きな姉のことを、新堂の者ということだけで諦めた副社長だ。おそらく私が考える以上に両家の確執は深いに違いない。

だったら絶対にバレるわけにはいかない。

「副社長の足……早く完治すればいいのに……」

そう思いながらも、治って欲しくないという自分もいる。
このぐちゃぐちゃな気持ちをどうすればいいのだろう。

「瑞樹……」

カーテンの隙間から射し込む冷たい月明かりに照らされた瑞樹の寝顔を、切なさと共に一晩中見つめていた。