ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「――それで……翠花って?」
「翠花は新堂コンツェルンの娘で幼馴染み……僕の初恋の相手だ」

うわっ! 驚愕の事実。

「何だ、そんなまん丸い目をして。僕が恋することがそんなに驚くことか?」

ぶんぶんと頭を振る。

「翠花は本当に綺麗で優しい子だった。だが、家同士は犬猿の仲だったからな、同級の幼馴染みという枠から決して外れることはなかった」

副社長の横顔に憂いが漂う。

「僕が何も出来ずにいる間に、翠花は小金建設の息子……小金啓治と恋仲になった。だが、新堂の家は小金と鏑木の癒着を知っていた。当然二人の交際を反対した。結果、翠花は家を出て行き……死んだ」

彼がぎゅっと拳を握る。まるで悔しさを閉じ込めるように。

「――瑞樹を初めて見たとき」
「えっ」
「なぜか翠花に似ていると思った」

何て鋭い人なんだろう。それは当然だ。二人は親子なのだから。でも、副社長は姉が子供を産んだことまでは知らないようだ。

「だからかな、余計にお前たちを側に置きたくなった」

可愛いもの好きだけじゃなかったんだ……。
なぜだろう、きりっと胸が痛む。

「まぁ、それより何よりお前を気に入ったから世話を頼んだんだがな」

沈み掛けた気分がちょっとだけ浮上する。