ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「毎度毎度、君はトイレでよく絡まれるなぁ」

副社長が呆れ顔で「だから離れられないんだ」と宣う。
もしかしたら、毎度毎度トイレに付いてくるのは私の身を守るため?

「君たちは僕の婚約者に何度意地悪をすれば気が済むんだい?」

視線を秘書補佐五人に向け、順番に睨んでいく。
途端に五人は顔を強張らせる。

「いっ意地悪だなんて!」
「そうです、言いがかりです!」

それでも反論は忘れない。

「副社長は今、正式な婚約者と仰いましたが、我々五人には何の連絡もありませんでした。私たちはあくまで副社長の婚約者候補として集められた五人です。だから、ご本人である山本さんにお訊きしていたのです」

葵がツンと顎を上げる。どうだと言わんばかりだ。

「では伝える。彼女、山本奈々美は僕の婚約者。近い将来の花嫁だ。これで満足したか?」

副社長がフンと鼻を鳴らし、「そうそう」と話を続ける。

「君たちは今日限りでクビだ」
「なっ何ですって!」

葵が声を上げる。

「婚約者云々の話を噂で聞いて知ったんだろ?」

「それは……」と皆口ごもる。

「噂に振り回されるようじゃ僕の秘書にはなれない。それに、婚約者候補を盾に、他の社員たちに随分と無茶を働いていたようだね」