ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

でも、何様と訊ねられても……今はしがない副社長の下僕? そんなの恥ずかしくて答えられない。

それに、何か言ったところで火に油を注ぐだろう。沈黙は金なり。黙っていた方が身のためだ。

「私たちとは口も利きたくないっていうこと!」

茜が怒鳴ると葵が「シッ!」と睨む。

「声が外に漏れるでしょう」

「あっ!」と茜が口を掌で押さえる。

「山本さん、貴女、副社長と婚約したって本当?」

葵が茜から私に視線を移動させ訊ねる。

婚約! よく『噂に尾ひれが付く』と聞くが本当だった。
いつの間に婚約者なんてものになったんだろう?

思わず否定の言葉が飛び出しそうになるが、社長の言葉が蘇る。

『これで拓也のゲイ疑惑は払拭出来るな』

あれが目的としての噂だったら……?
やっぱり黙っておくに越したことはないようだ。

「何とか言ったらどうなの!」
「そうよ、そうよ!」

美女軍団に包囲され、逃げるに逃げられず、どうしたものかと思っていたら、「彼女の代わりに僕が答えよう」と突然第三者の返事が聞こえた。

「ふっふっ副社長!」

デジャブ……? あの仮設トイレの時のようだ。

「そうだよ。彼女は僕の正式な婚約者だ」