ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「お前は馬鹿だなぁ。僕は君と瑞樹が欲しいと言っているんだ」

馬鹿は貴方だ! この人は子供か? 物じゃあるまいし、欲しいからといって簡単に手に入ると思っているのか?

「瑞樹も私もあげません」
「なぜだ!」

やっぱりだ。この人は昔の私だ。欲しいと思うものを何でも手にしてきた人なんだ。

「人間には感情というものがあります。欲しいというだけで手に入るのは感情のない物だけです。私には感情があります。だから、私に対して何の感情も持たない人と結婚できません。そして、私も何の感情も持っていない人と結婚しません」

「ふーん」と副社長が鼻を鳴らす。ちょっと怒っているようだ。

「だったら」といいながら、私の頭上にあった手を顎の下に置き、クイッと私の顔を上げる。

「僕のことを意識して好きになればいい!」

ニヤリと悪い笑みを浮かべると「あっ」と言う間もなく唇に唇を重ねられた。
目を丸くする私に向かって、唇を離した副社長が言う。

「テレるから、次からは目を閉じてくれ」
「つっ次って、なっ何をするんですか!」

思いっきり身を引き、副社長から離れる。

「何と不埒なことを! 膝に瑞樹がいるというのに!」
「じゃあ、瑞樹がいないときならいいんだ?」
「いいわけないじゃなないですか!」

羞恥と怒りで全身が上気する。

「こら! 大声を出すな。瑞樹が起きる」

先手必勝とばかりに注意され、行き場を失った怒りを拳を握り閉じ込めた。