「ふっ副社長!」

それに剣持さんも……。
声の方に視線を向けた私と美和は驚きと同時に声を上げた。

「もし、君が階段から落ちて助けたとしても、君を家政婦にはしない!」

キッパリ言い切り、摂氏零度の眼で美和さんを睨む。

剣持さんも凄むと怖いが副社長はそれに輪をかけたように怖い。本当、『可愛い!』と萌えている時とのギャップがありすぎだ。

ヒッと引き攣る美和さんを目の端に置き、この反応は当然の反応だと思う私がいる。

「どうしてだか分かるか?」

淡々とした声が訊ねるが、美和さんは固まったまま動かない。

「理由は簡単だ。君が可愛くないからだ」

おいおい! 思わず突っ込みそうになるがグッと堪える。

しかし、いくら何でも女性に対してそのストレートな物言いはないだろう。案の定、蒼白となった美和さんの瞳からポロポロと涙が零れ始める。

「ちょっと、副社長!」

やっぱり捨て置けない。美和さんを背で囲うように彼女の前に立つ。でも、彼女の方が背が高いので、どう考えても囲いきれない。ちょっとカッコ悪いが言うことは言う。

「彼女のことを可愛くないなんて言う資格はないと思います。貴方、彼女の何を知っているというのですか! 何も知らないでしょう? だったら……謝って下さい。今の言葉は失礼すぎます」

副社長は一瞬だけ『こいつ何を言ってるんだ?』というような顔で剣持さんと視線を交わした。だが、次の瞬間、お腹を抱えながら笑い出した。その横で剣持さんもグーの手で口元を押さえている。