まして子持ちだ。“子供の一時預かりサービス”という所で、面接時間ぐらいの短時間ならどうにかなったが……。

仕事が決まらない限り瑞樹を保育園には預けられない。預けられない限りまともな職に就けない。

堂々巡りの悪循環に、超ポジティブシンキング脳の私も閉口した。お嬢様育ちの私が世の無常を初めて知った瞬間だった。

仕方なく正社員は諦め、取り敢えず派遣でもと思い建設関係を専門に扱っている派遣会社に登録した。私はこの世界しか知らないからだ。

ようやく建設作業員としての仕事を得たのは姉の死後、三ヶ月経った五月も末のことだった。

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「山本、お前、そんな細っこい体で、何でこんなところで働いてんだ?」

今日はいいお天気だ。梅雨もそろそろ終わりだろうか?

夏の日射しを感じさせる輝く太陽の下、仕事仲間の常爺さんが大きなお弁当箱を左手に持ち、ご飯を口に掻き込みながらまたこの質問を持ち出した。これで何度目だろう。

サンドイッチを食べる手を休め、額の上に手を添え庇を作り眩しい大空を見上げる。

夏かぁ……季節の中で一番好きだったのは学生だったからだ。働き始めて二年近くなるといろいろ分かってくる。

外仕事が辛いのは夏と冬。派遣の建設作業員泣かせなのは梅雨。雨が降ると作業が一時中止となるからだ。その間、収入はゼロ。

常爺さんがご機嫌なのは仕事ができるからだ。