ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

そんな私の疑問など、全く頓着せずみたいに副社長は変身した私を連れて店を出る。そして、再び私たちを乗せた車は……ものの数分で会社に到着した。

「車椅子は出さなくていい、あとでお前が持ってきてくれ」

剣持さんが表玄関に車を停めると、副社長は松葉杖の片方を私に渡す。
どういう意味? それを受け取り車外に出る。

「ほら、こっちに来い!」

反対のドアから副社長が声を上げる。慌てて副社長の元に行くと、毎度お馴染みの指クイで『側に来い』と呼ぶ。

仕方なく身を屈め副社長に近付くと、彼の手が私の肩に回る。

「ちょっ、ちょっと副社長、何をしているんですか!」
「松葉杖代わりだ」

何をトンチンカンなことを言っているのだ!

「こちらを使えば私が杖にならなくても……」
「不親切だな。恩返しをするんだろ?」

フンと鼻を鳴らすと副社長は右手に松葉杖、左手を私の肩に回したまま歩き出す。

「やっぱり思った通りだ。丁度いい高さだ。歩きやすい」

副社長は嬉々としているが、こんな姿で会社に入ったらどんな目で見られるか!

そして……私の危惧は当たった。自動ドアが開いた瞬間、受付嬢と思しき女性二人が、カウンターの中で小さな悲鳴を上げ目を点にした。

朝の挨拶すら出てこないほどビックリしているようだ。
副社長はそれを気にする様子もなく歩みを進める。

だが、私は大いに気にする。
視線が痛い。