ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

その店員さんが、私に歩み寄り耳打ちする。

「お嬢ちゃん、東條寺様を怒らせないで! 私を失業者にしないでちょうだい!」

ニッコリと微笑むが眼が怖い。
どうやら副社長の意向に沿わない行動を取ると、店員さんは失業してしまうらしい。

情けは人のためならず。渋々、フィッティングルームに戻ると六着全て試着する。

「取り敢えず、その三着を包んでくれ。今、着ている物はこのままでいい」
「畏まりました。ありがとうございます!」

首の繋がった店員さんが、頭の天辺に響くような甲高い声でお礼を述べる。たぶん、首が繋がっただけではなく売り上げナンバーワンに躍り出たのだろう。

ホクホク顔の店員さんが、「そのお洋服にその靴では……」とホワイトレザーのパンプスとバッグを差し出した。

「こちらはこの夏の新作です。お持ち下さい。プレゼントです」

おまけにしては金額が大きすぎると思うが、きっと、それ以上に大きな収入を得たからだろう。

「奈々美、良かったな。よく似合う」

副社長が満足そうに微笑むが……。
「これでは恩返しにならないと思うのですが……」と言うと――。

「奈々美が前髪と眼鏡を取ったら、十分、恩返しになるんだが」

真顔で言う。本当にこの人……意味不明だ。