ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「ちょっと例えが古いが、王道だな。まぁ、そんなところだ」

案の定だった。

「申し訳ございませんが、私、夢見る夢子はもう卒業致しました。シンデレラ物語にも興味ございません。レディもウーマンもご辞退致します」

ピシャリと言ったつもりなのに……どうして笑われるのだろう?
店員さんにまで。

「腹痛っ!」

目尻に涙を浮かべた副社長が笑いを収めて言う。

「お前、本当、可愛いな。ボーイでもお前なら可愛いと思うけど、ガールに止まっていてくれたら尚よしだ」

副社長の言葉に店員さんはぷぷっと吹き出すが、私は笑えない。意味が分からない。

「とにかく、ぐちゃぐちゃ言ってんじゃない! 時間がないって言ってんだろ。さっさと着替えろ!」

ひょえぇぇ! 怖っ!
いきなり怒りだした副社長から逃れるように、パタンとドアを閉める。

「着たら、すぐドアを開けろ」

壁の向こう側から聞こえる副社長の声には苛立ちが混じっている。
こうなっては逆らっても仕方がないと「了解です」と返事をして着替える。

手渡されたのは淡いブルーのスーツだが、デザインと生地がソフトな感じだからだろうか鏡の中の私も柔らかな印象になる。

私とて以前はお嬢様と呼ばれた身、このブランドの価値がどれ位なのか重々承知している。おそらく、先月分の給料では足りないだろう。