ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「お言葉ですが、部外者が社長室に無闇に立ち入るのはいかがなものかと」
「どんな不都合があるというのだ?」
「例えば、マル秘情報の漏洩とか?」

「ほほう」と副社長が目を細め、薄く開いた目で私を見る。

「君は恩を仇で返すような奴なのか?」
「私だって人間です。大金を目の前に積まれたら、欲に眩みフラフラッと」
「そんな人間は正直にそんな話をしない」

彼の目がフワリと優しくなる。

「だから、お前は僕を裏切らない。それに、僕が可愛いと思った者が悪しき人間であるはずがない!」

本当に呆れるが……どうやら副社長の善悪の基準は、自分が萌えるか萌えないからしい。

「僕の直感は確かだ」

真面目なのか不真面目なのかよく分からないが、私は危うく彼の手の内に乗りそうになった。

「だったら眼鏡を返して下さい」

だが、逆らったところでこの副社長だ、絶対に折れないだろう。しかし、素顔を晒すわけにはいかない。敵陣に乗り込むのだから。

「コンタクトの方がいいのに」

ブツブツ文句を言いながら、それでも折れてくれたようだ。「しょうがないなぁ」と言いながら眼鏡を返してくれた。

「でも……身なりは社会人らしく整えてくれ。いくら家政婦だからと言ってもエプロン姿はNGだからな」

「なぁ、瑞樹」と甘い声で同意を求める。この変わり身の早さ。カメレオンか!