ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「奈々美ちゃん!」

蘭子さんがギュッと私を抱き締める。

「聞いたわ。楠木と小金に苛められたんだって」

あまりの力強さに息もできないぐらいだ。

「安心して、とっちめてやったから」
「蘭子さん、そのぐらいで」

助け船を出してくれたのは櫻木氏だった。

「そうだったわね。舞台の上で拓也がジレジレしてるわ」
「ということで、奈々美さん、どうぞ舞台に」

――と言われ、袖から会場を眺め見て、「無理です!」と後退る。

新堂家の教えで私は晴れやかな舞台とは縁遠く生きてきた。それなのに……これは罰ゲームと同じだ。

「私、そういう奈々美さんも嫌いじゃないけど、女は度胸よ!」

グイッと私の手を取ると蘭子さんは舞台中央に向かって歩き出した。
東條寺蘭子の登場に会場が水を打ったように静まり返る。

なぜなら、滅多に笑わない東條寺蘭子が女の子の手を引き聖母マリアのような微笑みを浮かべていたからだ。

「蘭子さん、ありがとう――奈々美」

マイク越しではない肉声が私を呼ぶと蘭子さんがポンと私の背中を押した。その勢いで私は副社長の胸に倒れ込んだ。

「――会いたかったよ」

副社長の切なげな声が耳元で聞こえた。