ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「美和さんと剣持さんは、今、お付き合いされているのよ」

『ブルータスよ、お前もか』という心境だった。
やっと出た言葉は非難めいていた。

「桜子さん、それ知ってて黙っていたんですよね」

初対面とは思えなかったファミレスでの様子もそれなら頷ける。既に知り合いだったのだ。

「だって、美和さんが今日まで内緒だって言うんだもの」
「そりゃそうでしょう。計画に支障をきたすじゃない」

二人のやり取りを呆然と聞きながら、どうやら私はその計画の蚊帳の外に置かれていたらしい、ということだけはハッキリと分かった。

「シッ、始まるわよ」

桜子さんが部屋の隅にあるモニターに目を移した。釣られて見る――どうやら向かうはずだったレストランを映しているらしい。

ぐるりと一周するカメラは大勢の人を捉えていた。そのカメラが舞台横に設置された司会者ブースに向く。

〈皆様、ご静粛に〉

会場が一瞬で静まる。
モニター越しに耳障りの良い司会者の声が聞こえてきた。

〈これより丸東建設新社屋披露パーティーを開催致します。ですが、パーティーに先立ちまして東條寺拓也副社長から重大発表があるということです。皆様、今しばらくご静粛に。では、副社長どうぞ〉

モニターの映像が司会者から舞台中央に移動する
マイクスタンドが一本立っている。そこに現われたのは――久し振りに見る副社長だった。