ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「うわっ、見たか? 今の天使の微笑みっていうんじゃないか?」
「うん、まさに天使だった」

どうやら瑞樹の笑みにエレベーター内の人たち全員が魅了されたらしい。
フフンと桜子さんが自慢げに鼻を鳴らすと、いきなり爆弾を落とした。

「当然でしょう。あの可愛いモノ好きの東條寺拓也が認めた子よ」

へっ……? 耳を疑ったと同時に周りから「東條寺拓也!」と一斉に声が上がる。

狭いエレベーター内だ。響めきに驚いたアリスちゃんと瑞樹が泣き出した。物凄い大声だ。

子どもの泣き声は舞台俳優にでもなれそうなぐらい通る。報道関係者も取材どころではなくなったようだ。チンとエレベーターが到着した途端、耳を塞ぎ慌てて飛び出して行った。

そんな様子に桜子さんはほくそ笑む。
まさかだが……何となく一連の流れが桜子さんの筋書きのように思えてならなかった。

「さてと。シッターさんがいるのはこっちよ」

しかし、桜子さんの様子は一貫していた。実に楽しそうだ。

彼女が私を誘ったのはレストランの手前にあるドアだった。そこは奥に長い狭い部屋だった。突き当たりにもう一つドアがある。

そこから一人の男性が出てきた。

「久し振りだね」

投げかけられた声と同時に足が止まる。

「しゃ社長!」