ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「それでも、何があっても瑞樹を守らなきゃ」

姉のためにも絶対に小金啓治に渡してなるものか、と改めて心に誓い、私もゆっくり目を閉じた。



「あの、何だかホテルがざわついていないですか?」

今日は午後から料理教室ということもあり、少し早めに昼食を取ることになった。向かう先は最上階の展望レストラン。ここにもキッズ同伴スペースというものが設けられているらしい。

「そう? いつもこんな風じゃないかしら?」

桜子さんが小首を傾げるが、昨日はもっと少し落ち着きがあったように思えてならなかった。でも、いろいろあって神経質になっているのかなと思い直す。

「あれなんですか?」

エレベーターホールを目前に、黒山の人だかりが目に映る。

「東條寺拓也が婚約発表だってよ」

近付くと、ざわめく人々の中からそんな声が聞こえてきた。

「お相手だという楠木茉莉乃も来てるんだろう?」
「ああ、らしいな。これで決定だな」

よく見ると、黒山の人々の多くはマスコミ関係の人たちのようだ。業界用のカメラやマイクを抱えていた。

「貴方たち」その時だった。

「ここは一般客専用のエレベーターよ。どうしてスタッフ用のエレベーターを使わないの!」

凜とした桜子さんの声がエレベーターホールに響く。
彼女は一見大人しそうに見えるが、こういう男前のところもある。