ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

うふふと彼女が悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「私、シークレットなクッキングスクールに通っているの」

何? そのシークレットなとは……?

「海音リゾートホテルって知ってる?」

ドキンと心臓が大きく高鳴る。

「そこで子育て中の母親対象にお料理教室が開かれているの」

桜子さん曰く、会場となるホテルの場所は月替わりで、日程は二泊三日。その間ぎっしりとスケジュールが盛り込まれているそうだ。

「お料理教室だけじゃなくてエステとかプチコンサートとか、とにかくホテルで存分に癒やしの時間を味わえるの」

どうやら社長の蘭子さんの企画らしい。これが若奥様方に口コミで広がり、毎度キャンセル待ちでいっぱいだそうだと言う。

「お料理教室の講師って東條寺蘭子さんだけなの。あちこちで一斉に開催されないのは、だからなのよ」

そう言えば……と思い出す。東條寺蘭子は料理研究家としても有名だった。そんな蘭子が教える料理だ……とテーブルを見る。確かに目にも舌にも美味だ。

「皆、蘭子さんにお料理が習いたくて毎月必死なのよ」

でも……フフフと笑う桜子さんにはその焦りが見られない。変だなと思ったら。「私は特別枠で毎月参加できるのよ」と微笑んだ。

特別枠? 何が特別なのだろうと思っていると、「だって、主人はあのホテルの関係者だもの」と驚きの事実を伝えた。