ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「遅くなってすみませんでした」

かなり長い時間席を外していたが、瑞樹は全く淋しがっていなかった。部屋の隅に設けられたキッズスペースでアリスちゃんとお絵描きをしていた。満面の笑顔だ。

そんな二人を眺めていた桜子さんが私の顔を見るなり、眉を顰めた。

「どうかなさった? お顔の色が……ご気分でも悪いの?」
「あっ、大丈夫です」

そう言いながらも、鋭い人だと少し桜子さんを警戒する。
茉莉乃さんの言葉が気になって、他人に対して用心する必要がある、と感じたからだ。

「そう? ならいいんだけど……」

でも、桜子さんはいまいち納得していないようだ。

「――えっと、月のモノがきちゃいまして」

当然嘘だ。終わったばかりだ。それに私は比較的楽な方だ。

「あら、そうだったの。私もアリスを生むまでは酷かったのよ」と桜子さんがようやく納得したように話し出した。

「でもねっ、アリスを生んだら魔法がかかったように楽になっちゃった。よく『お産をすると血が変わる』って言うでしょう? あれ本当ね」

そんなものなのかと黙って聞いていると、「奈々美さん、ご結婚のご予定は?」といきなり訊ねられた。

「はいぃぃ?」と思わず素っ頓狂な声が出る。