ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

あれほどの大会社だ。株主だったら優待券や招待券が貰えるだろうし、海音グループに携わる人間なら手に入れることができるだろう。だからだ。

「みー!」

一足早く片付けを終わらせた瑞樹が私に駆け寄ってきた。

「瑞樹、ケーキ食べに行くよ」
「ケーキ!」

瑞樹が満面の笑みになる。

「アリスちゃんとアリスちゃんのママも一緒だよ」

瑞樹がキョトンとする。

そう言えば……瑞樹は保育園のお友達と退園後に遊んだことがない。
そういうことをしてあげる余裕もなかったな、と今更ながら反省していると――。

「たぁ君」

瑞樹が副社長の名を呼んだ。

「副社長は行かないよ」

ここのところ外食はいつも副社長が一緒だったからだろうが……私たちは近々あそこを出る身。瑞樹が副社長を慕えば慕うほど別れが辛くなる。

これは危険な兆候だ。早めの対処が必要だと苦渋しそうになったが……。

まだ『いや』が始まっていない瑞樹は、私の言葉にあっさり納得した。きっと、大好きなケーキのことで頭がいっぱいなのだろう。

――ホッと安心したが、これは束の間だと自分に言い聞かせて、別れの手はずを考えねばと思った。



「お洒落なホテルで、こんなにリラックスしてケーキバイキングができるなんて!」

あれほどシリアスに別れのことを考えていた私はどこへやら?