ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

『瑞樹くんにとっては同性の大人の人がいい成長剤になっているんでしょうね』

そのひと言だけだった。

確かに。男先生を除いて、今まで瑞樹の側に同性の大人などいなかった。祖父である父にも会わせていないのだから……。

「成長剤かぁ。副社長の家を出たら……また、それを失うんだ」

世の中に母子家庭がどれぐれいあるか知らない。瑞樹のように私以外家族のいない子もいるだろう。その子たちの親もこんなふうに悩んでいるんだろうか?

「瑞樹ー、お待たせ」

お遊戯室で待っていた瑞樹に声をかける。

「みー!」

顔いっぱいに笑顔を浮かべて瑞樹が駆け寄ってくる。
その身体をギュッと抱き締める。

「お絵描きしてたの?」

瑞樹の座っていた椅子の前にお絵描きセットが置かれている。
その隣の女の子が一生懸命絵を描いている。園で一番仲良しのアリスちゃんだ。

これぐらいの子は女の子の方がおしゃまだから、同じ年だが瑞樹はアリスちゃんをお姉さんのように感じているみたいだった。

アリスちゃんのご両親は共に会社員で、朝はお父さんが、帰りはお母さんが送り迎えをしている。挨拶程度しか会話はしたことはないが、二人共とても優しそうに思えた。