ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

副社長には『黙って出て行かない』と言ったが、『出て行かない』とは言っていない。

でも、その時期をいつにするかが問題なわけで……ギプスが取れた今、それはいつでもいわけで……。

そんなふうにぐだぐだ思っているが、本当は出て行くのを躊躇っている自分がいる。

「厄介だなぁ」

独り言ちると私もダイニングに向かった。

***

「ありがとうございます。今後もどうぞよろしくお願いします」

深々と頭を下げるとウサギ組の部屋を出る。

全園の保護者会が終わった後で、希望者のみ先生との個別面談が受けられた。それに申し込んでおいたのだ。

瑞樹の生活は副社長との毎日で大きく変わった。子どもは変化に順応しやすいとはいうが、私が気付かない精神的な変化を先生は感じていないか聞きたかったのだ。

『以前以上に言葉が増えました』
『男先生にも自ら近付いて行くようになりました』
『動きが活発になったように感じられます』

そして――先生の言葉は全く稀有するものではなかった。そんな褒め言葉ばかりだった。どれもこれも副社長の影響だと分かるものばかりだ。

先生も噂で知っていると思う。送り迎えに男性が一緒だということを。でも、できた人だ。それには一切触れなかった。

ただ――。