ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「後悔を残すより、自分の気持ちに素直になろうとね。たとえどんな惨めな結果になろうとも、それはひと時だけだと分かったから」

副社長の手が優しく私の頬を撫でる。

「だから、僕はお前に素直な気持ちで接してきたつもりだ。後悔を残したくないからね。たとえ、誰がなんと言おうとお前以外の女と結婚するつもりはない」

「――私が誰だとしても?」

一瞬だけ副社長はハテナを浮かべたが、「お前は山本奈々美だろう?」と笑う。

「山本奈々美じゃなかったら?」
「誰だというんだ?」

新堂奈々美……その名前が口を突いて出そうになる。でも……とそれを押し留める。今、それを言ったところで副社長を混乱させるだけだと思ったからだ。

「――ミステリアス・ガール?」

ちょっとふざけてそう言うと、副社長が大笑いし出す。

「お前がミステリアス? 突き抜けるほど透け透けだぞ」

それって褒めて……ないよね?

「失礼な! 私にも秘密はあります」

ちょっと本音を漏らす。

「お前の秘密なんか、子どもの隠し事以下だろ? そんなの秘密でも何でも無い」

それが違うんだよねぇと独り言ちる。