ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「まぁ、そう思えるのも無理ないけどね」
「そうですね。単調な道ですので居眠り運転での事故も多いですし」

副社長の言葉に喜田さんが被せて言う。
ちょっと車内が和む。

「喜田君、寝ないでくれよ。蘭子さんに会わせてくれなかったら化けて出るぞ」

でも、縁起でもないのはこの人たちの方だ。

「あっ、瑞樹、馬さんがいるよ」

彼らの会話を無視して瑞樹の意識を車窓の外へと誘う。
牧場だろうか? 緑のカーペットが延々と続く丘にポツンポツンと馬が佇んでいる。

動物絵本をよく見ているが、遠くに見えるそれが馬だと思ったかは分からないが、瑞樹の目がキラキラと輝く。やはり、絵本とは違う何かをそこに感じたらしい。

「体験をして体感する。子どもには最高の学びだな。瑞樹、あとで馬に乗ろうか?」

副社長も瑞樹の変化を感じたようだ。嬉々としながら提案する。

「無理ですよ、乗馬なんて」
「ポニーなら大丈夫だろう? ねぇ、喜田さん」
「さようですね。ベビー用の鞍を付ければ」

ベビーチェアー? 鞍にそんなのあるのと思っていたら「特注です」と喜田さんが説明してくれた。

この鞍は副社長が二歳、瑞樹の歳ぐらいに誕生した物だそうだ。蘭子さんのアイディアらしいが、単に副社長を乗せたかったから作ったらしい。