ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ

「蘭子様は社長の怪しげな行動に気付いていらっしゃいました」

喜田さんの言葉に副社長が眉を寄せる。

「シークレットでも何でもないじゃないか」
「そうか……どうりでタイミングよく現われたと思ったら……」

――と言いながら、なぜか社長は嬉しそうだ。

「そこまで私に執着してくれていたなんて感激だなぁ」
「いや、ただ単に探偵ごっこのターゲットが父さんだっただけじゃない?」
「副社長、それでは社長のお立場が……」

喜田さんが慌ててフォローを入れるが、そのフォローこそが真実だと言っているようなものだった。社長がうじうじと拗ね始める。

「鬱陶しい!」

副社長が怒鳴る。

「落ち込んでる暇なんてないんじゃない? ご機嫌伺いするんだろ?」
「おお! そうだった」

復活した社長が先頭を切って車に乗り込む。
その後に続き、我々も同乗する。



左右の車窓を北海道の木と指定されているアカエゾマツが流れていく。その深い緑に彩られた並木道はどこまでも真っ直ぐで、その先には真っ青な空が広がっている。

「――まるで天界へ向かう道ですね」

ポツリと呟いた言葉に副社長がギョッとする。

「聞きようによっては天国への道とも取れる言い方だな。縁起でもない」

もしかしたら、それは蘭子さんがその向こうに待っているという意味?

「えっ? そんな意味じゃ……」

慌てて否定するが、車内に緊張が走る。