出口の前にミュージアムショップがあり冷やかし程度に入ってみると、何とも手触りのいいイルカのぬいぐるみがあった。
先程のショーに心奪われた私は手に取って悩む。

大きいぬいぐるみは3500円。
小さいぬいぐるみは1500円。

うーん、何でぬいぐるみってこんなに高いんだろう。
どちらも触り心地は申し分ない。
表情も可愛い。
ほしいけど、高いよなぁ。

なんて、ちょっと貧乏くさいことを考えていたら、

「ほしいの?」

と、飯田くんが覗き込んでくる。

「迷ってる。だって、意外と高いんだもん。」

迷ってると言いながらずっとぬいぐるみを抱えたままの私に、飯田くんはクスクス笑いながら大きい方を抜き取る。

「買ってあげる。」

そう言ってスタスタとレジへ持っていく。

「えっ。いいよ、自分で買う。」

小さいぬいぐるみを棚に戻し慌てて追いかけるが、「プレゼントだよ」と言って譲らない。
でも誕生日でもないし記念日でもないし、社会人で自分で稼いでもいるのに買ってもらうなんて気が引ける。

「いつも何もしてあげられないから、たまには、ね。」

飯田くんの気持ちが胸をぎゅっとさせる。
素直に甘えちゃってもいいのかな?

お会計を済ませた袋を渡しながら、飯田くんが言う。

「このイルカ、詩織みたいだよね。」

「えっ。どこが?」

「目がくりっとしててマスコット的なとこ。」

「よくわかんない。」

飯田くんは、ははっと笑ったあと、

「可愛いってことだよ。」

と耳元で囁いた。
不意打ち過ぎて体の熱が一気に急上昇した。