そう思ったのは私の心だけで、目の前に来た飯田くんに「お疲れ様」と言うことすら声が震えそうになった。
飯田くんの顔が、困っている様に見えたから。

「ちょっと…話そうか。」

いつもとは違うどこか無機質な声に、私は小さく頷いて彼の後を追った。

駅に併設する公園は、この時間にはさすがに人気がなかった。
わずかに灯る街灯の明かりが、うっすらと私たちを照らしている。
何となく、彼の目を見ることができなくて、私は俯いてしまう。

何を言われるのだろう…。
緊張で手が震えそうになるのを、かたくぎゅっと握った。


「愛想尽かされたのかな、と思ってた。」

「えっ。」

思いもよらない言葉に、私は顔を上げた。

「電話もメールもないから。」

「それは……。」

飯田くんからしてくれればいいじゃない。と言うより早く、

「ごめん。」

と謝られた。
はあー、と大きな溜め息をついて、飯田くんは首を横に振る。

「違うんだ。…俺は甘えていたんだ、君に。いつもマメに電話やメールをくれるから。…それが嬉しかったから。」

「…嬉しかった?迷惑じゃ…なかった?」

あなたの、仕事の邪魔になったりしていなかった?

「好きな子からの電話が迷惑なわけないだろ?」

厳しい表情がふっと緩んで、いつもの優しい飯田くんだった。
恐る恐る顔をあげると、ポンポンっと頭を撫でてくれる。
たったそれだけで満たされてしまって、視界が滲んでしまう。