「BBチームは俺が集めたスポーツ万能集団だ。勝てるもんなら勝ってみな」
「卑怯者!」
 桜井さんもさすがに分が悪いと思ったんだろう。出てくる台詞もありがちなものになってきた。
「別にお前らも今からチームメイトを変えてもいいんだぜ。まぁ、俺たちより強いやつは残ってないだろうけどな」
「うぐぐぐ…」
 ついに言葉が出なくなった桜井さんが唇をかむ。すると
「どちらかが決勝まで残らなかった場合は、不戦勝ってことでいいのかな」
と、小島より更に傍観していた御手洗君が座ったまま食後の文庫本を取り出しながら口を挟んできたが
「もちろんだ。俺たちは万が一にもないだろうけどな」
「了解」
 聞きたいことだけ聞くと、あっさり本の世界に入っていった。
「ここまできたらやろうよ、エイト君。負けたらまたそのとき考えよう。ねっ、綾奈ちゃん」
「うん」
 どうやら遠藤さんの闘争本能にまで火がついてしまったらしい。内心反対したいのは、チームで足をひっぱっている僕と綾奈ちゃんだけみたいだ。
 ここは腹をくくるしかないのか。
「わかった。その代わり僕たちが勝った場合、謝ってもらわなくていい。別の罰をつけようじゃないか」
「なるほど、確かにこの賭けのままじゃ不公平だからな。あとでぼやかれても困るし。で、その罰っていうのは」
「それは…僕たちが勝ってからのお楽しみだ」
「いいだろう。せいぜい頑張って決勝まであがってくるんだな」
と、最後まで強気の今井とその仲間たちは体育館に戻っていった。
 さぁ、これでただの通過行事から負けられない戦いになってしまった。
 僕は遠藤さんが今井のマネージャーとして働く姿を頭から押しよけて、これからのことを考えていた。
 さて、どうしよう?
 彼らに勝てるアイデアは全く浮かんでこないまま、次の試合時間は刻々と近づいていくのであった。