「面白いじゃない」
 桜井さんは突然の挑戦状に鼻を鳴らす。
 だぁっ、ちょっと待て。
 なんなんだ、この展開は。
 相田先輩がいなくても、十分おかしな話になっていませんか。
「いいわよ、受けてたつわ」
と肝心の遠藤さんの返事も待たず、桜井さんが同意する。
「ちょっと、薫子ちゃん」
 さすがに口を挟もうとする遠藤さんに
「いいから玲は黙ってて。これは、あれよ。私たちCCチーム、いや1年C組に対する挑戦よ。学級委員としてこの勝負、受けないわけにはいかないわ」
 ここにきて、もう一人傍若無人な生徒が混ざっているとは。
『類友』はもう結構です、神様。
「OK、話は決まったな」
 決まってません。
「稲垣、C組のCチームとあたるのは、いつだ?」
「順当に勝ち進んでも、決勝戦まであたらないな」
今井の後ろにいた稲垣という生徒がプリント見て説明すると
「おい、稲垣! なんでお前がそっちにいるんだよ」
と、それまで傍観していた小島が口を挟んだ。
 あっ、ホントだ。
どこかで見たことがあると思ったら、同じC組の稲垣君だった。
「ちょっと稲垣君、あなたうちのクラスでしょ。なんでB組とつるんでるのよ!」
「ごめん、委員長」
 案の定、桜井さんも抗議する。
「おいおい。別にクラスの中でチームを作らなきゃいけないなんて決まりはないぜ」
 稲垣君と桜井さんの間に割って入る今井の言うとおり、今回の球技大会に細かな取り決めは一切されていなかった。
 36人ぴったりでクラス編成されているところはA組とE組だけで、あとはごちゃ混ぜもいいとこ。
 当日になってから決めたチーム組なだけに、生徒通しでチームメイトを交換したり、仲のいい奴通しでチームを組み直したり、みんなやりたい放題で、最初から『クラス対抗』なんていうのはあってないようなものになっていたのだ。
 先生たちもお祭りみたいなものだし時間通り平和に終われば問題なし、と思っているらしく一切口を出さなかった。(どこまでリベラルなんだ)