勝手な話だが、別段それは構わない。
 僕の頭の中にも優勝しかないからだ。
 クラス対抗で何よりもベストなのは、遠藤さんが標準装備されているということ以外、何があげられようか。
 もちろん女子のソフトボールの試合も同時に行われるわけだけど、同じ時間に行われることはお互いが決勝に上らない限りあり得ない。
 つまり確実に彼女の声援を受けることができ、かつ大活躍なんかしてしまった日には高感度アップ確定だ。
 白熱した決勝戦は2対2のまま延長戦へ。
 しかしその時間もロスタイムを残すのみ。
 小島のシュートが惜しくもキーパーの手をかすめ、外へ出る。
 おそらくこのコーナーキックが最後のチャンスになるだろう。
 全校生徒の注目が集まる中、御手洗君がセンタリングをあげたボールはペナルティエリアの中央に向かって飛んでいく。
 待ち構えたように飛び出す相手チームのディフェンダーからスルリと抜け出した僕は、地面を高く蹴り上げ、夕日をバックにオーバーヘッドキックを繰り出すのだ。
 あまりの速さにキーパーは一歩も動けない。
 ゴールネットに高速回転をしたサッカーボールが突き刺さり、その瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
 校庭は大歓声の嵐。
 感極まって僕のところに集まるクラスメイトたち。
僕はそれを押し分け、感動に立ちすくんでいる遠藤さんの前に出るのだ。
「玲の声援が最後のシュートを決めさせてくれた」
玲は目に涙を溢れさせてギュッと僕に抱きつくと、大雨のような拍手が校庭内を包み込むのだった。
そう、バチバチと。
今、窓に映る雨のように。
(んっ?)
 雨の場合はどうなるんですか?
 恐る恐る僕が黒板を見ると
『雨天決行
その場合、男女混合バレーボール』
と最後に小さな文字で書かれていた。