「がんばって!」
遠藤さんの声援だけが心の支えだ。
彼女の前で無様な姿だけは見せられない。
せめて華々しく散ろう。
「それから私が勝った場合、そちらにはどんな罰があるのでしょう?」
指をパキポキと鳴らしながら、利一君が相田先輩に当然のことを尋ねてきた。すると不敵な笑みを浮かべた先輩が
「万が一にも有得ないことだが、その時は…そうだな、私の持っている限定版ブルース・リーテレホンカードをくれてやる」
と、ムダにもったいぶってから言い放った。
それで誰が喜ぶんだよ。
「いいでしょう」
と、利一君が同意する。
人の価値観って、人それぞれだ。
「それでは、先鋒。前へ」
いかにも師範代くさい白髪ヒゲ面のオッサンが、いつの間にか主審を務めている。
同じようにギャラリーも門下生でいっぱいになっていた。
「今回の勝ち抜き戦は、先に一本を先取したほうが勝ちとする。よいな?」
コンタクトを外した洸河先輩と、利一君が向かい合い、同時に軽く頭を下げる。ちなみに僕が副将で、相田先輩が大将だ。
利一君が右半身に重心を置いて構え、それに対抗するかのように洸河先輩は、両手を広げて片足で立つと、大胆不敵に笑い始めた。
「ふっふっふ。どうやら君は、私のことを見くびっていたようだね。こう見えても私は南斗真拳最後の伝承者なのさ!」
「凄いね、エイト君。まさか先輩がそんな強い人だったなんて!」
遠藤さんがそう言って目を輝かせている。
彼女は、本当に素直ないい子なのだ。
「そもそも199X年。海は枯れ、地は裂けあらゆる生命体が、絶滅したかと思われたがしかし! 人類は死滅して…」
「始め!」
洸河先輩の説明が終わるまでもなく試合開始の合図が出され
「ちょ、と待…」という言葉と共に、先輩は遥か後方に飛ばされていた。
「一本、それまで!」
門下生のギャラリーから歓声が上がる。
「大丈夫ですか、先輩!」
遠藤さんが倒れている洸河先輩のところへ駆け寄ると
「…ユリア」と呟いて気を失ってしまった。
僕が初めて洸河先輩の役者魂を見た瞬間だった。
遠藤さんの声援だけが心の支えだ。
彼女の前で無様な姿だけは見せられない。
せめて華々しく散ろう。
「それから私が勝った場合、そちらにはどんな罰があるのでしょう?」
指をパキポキと鳴らしながら、利一君が相田先輩に当然のことを尋ねてきた。すると不敵な笑みを浮かべた先輩が
「万が一にも有得ないことだが、その時は…そうだな、私の持っている限定版ブルース・リーテレホンカードをくれてやる」
と、ムダにもったいぶってから言い放った。
それで誰が喜ぶんだよ。
「いいでしょう」
と、利一君が同意する。
人の価値観って、人それぞれだ。
「それでは、先鋒。前へ」
いかにも師範代くさい白髪ヒゲ面のオッサンが、いつの間にか主審を務めている。
同じようにギャラリーも門下生でいっぱいになっていた。
「今回の勝ち抜き戦は、先に一本を先取したほうが勝ちとする。よいな?」
コンタクトを外した洸河先輩と、利一君が向かい合い、同時に軽く頭を下げる。ちなみに僕が副将で、相田先輩が大将だ。
利一君が右半身に重心を置いて構え、それに対抗するかのように洸河先輩は、両手を広げて片足で立つと、大胆不敵に笑い始めた。
「ふっふっふ。どうやら君は、私のことを見くびっていたようだね。こう見えても私は南斗真拳最後の伝承者なのさ!」
「凄いね、エイト君。まさか先輩がそんな強い人だったなんて!」
遠藤さんがそう言って目を輝かせている。
彼女は、本当に素直ないい子なのだ。
「そもそも199X年。海は枯れ、地は裂けあらゆる生命体が、絶滅したかと思われたがしかし! 人類は死滅して…」
「始め!」
洸河先輩の説明が終わるまでもなく試合開始の合図が出され
「ちょ、と待…」という言葉と共に、先輩は遥か後方に飛ばされていた。
「一本、それまで!」
門下生のギャラリーから歓声が上がる。
「大丈夫ですか、先輩!」
遠藤さんが倒れている洸河先輩のところへ駆け寄ると
「…ユリア」と呟いて気を失ってしまった。
僕が初めて洸河先輩の役者魂を見た瞬間だった。


